2003年11月13日号
 
今回のコラムは日本では珍しい、女性でフリーの政治ジャーナリスト・細川珠生さんに執筆していただきました。今、政治家に求められているものとは何か? 現在活躍中の政治家の実情、政界の全体像、そして、政治家への道という観点から、あるべき政治家の姿を探り続けている細川さん。総裁選・総選挙と続いた長い政治の空白を早く埋めろと叱咤激励されています。

   
細川珠生
     
   

 誰でも、人は一生の間に、耐え難いと思う苦しみに何度か遭遇する。自ら犯した過ちと自覚できれば心の整理は可能でも、自分以外の人間や客観的要因によって困難を強いられたときには、なかなかそれを受け入れることができない。そしてその解決もまた困難を強いられる。「なぜ、自分がこんな目に遭わなくてはならないのか」−幾度となく頭の中をめぐりながら、当たり所のない苦しみと、容易に見つからない答えに、自分の人生さえも悲観してしまうのだ。

その最たる事象が、『北朝鮮による日本国民の拉致』であろう。ある日突然、何の罪もない人間を、有無を言わさぬ強暴な手段で連れ去り、異国の、しかも日本とは全く体制の違う国に、何十年という長い期間、監禁する『拉致』。現代には起こりえないような『拉致』という凶悪犯罪の犠牲者の数は、私たちの住む日本で何百人という数に上る。本人も家族も、「なぜ、どうして?」の疑問を繰り返してきた。そして、自分たちだけでは解決できないこの問題に、社会はどれだけ心を合わせ、共に解決に向けて行動をしてきただろうか。

政治の責任は大きい。国民だけでは対処できない問題に立ち向かうことこそが、政治家という職業が存在する所以でもあるはずだ。ところが、自らの当選のみが最大の関心事であり、人生の目的でもある政治家に、手探りで向き合わなければならないこの『拉致問題』はじめ、幾多の外交交渉に力を注ぐ意欲さえないのだ。しかし、この問題は、政治家による外交交渉に頼る以外、解決の具体的方法はない。

国民が何の罪もなく、大きな苦しみと犠牲を強いられても、そこに心を砕くことなく、我が身の保身のみを生きる目的とする政治家を選んでいるのも、また、私たち国民である。私たちは、北朝鮮による拉致問題の全面解決に至るその日まで、同じ国に生き、社会を構成する同士として、関心を持ち続け、可能な限り行動することが重要である。いつ、どんなときにも「ブルーリボン」を身につける。それだけでも、社会の関心を維持することも高めることも可能であろう。

そして、一人ひとりの人生の中においては、どんな苦しみや困難も、ある日突然、最愛の家族が姿を消し、音信不通になり、その安否でさえも手につかむことができないような状況に比べたら、「些細なこと」と思える心の広さと深さを持ち合わせていかなければならないだろう。

     
     
   
   
細川珠生(ほそかわ・たまお)
1968年東京生。初等科より聖心女子学院で学び、1991年聖心女子大学外国語外国文学科卒。同年、米ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。1996年よりラジオ日本「珠生・隆一郎のモーニングトーク」でパーソナリティを、2003年10月より品川区教育委員会委員を務める。「未来を託す男たち」「自治体の挑戦」など政治、地方自治に関する著書を多数出版。政治評論家・細川隆一郎は父。故・細川隆元は大叔父。
     
     
     
   
   

 

 

     
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