2003年8月26日号
 
第四回目の執筆者は衆議院議員の高市早苗氏です。「国民の生命と財産、国家の主権と名誉を守ること」を基本に全ての政策を構築することを信条に、戦後日本が失ったものをもう一度再構築しよう、そして日本をもう一度エネルギッシュな国家に再生をしようと活動されています。今回のコラムでは「日本政府の北朝鮮への対応の在り方」について基本的な考えを語っていただきました。

   
高市早苗
     
   

 私たちが、北朝鮮による拉致の被害者やそのご家族の長年に渡り今も続いているご苦労や悲しみを想像しつつ、その一部でも共有しようと努めてみたところで、やはり被害当事者の方々の苦悩は「想像を絶する」ものであるに違いないと思います。ですから、私には拉致被害者や家族会の皆さまをお励まし出来るような言葉をここに書けるはずもございませんが、「日本政府の北朝鮮への対応の在り方」について、私自身の基本的な考え方を書かせていただきます。

 第1に、当たり前の事ですが、日朝国交正常化交渉の前提は、拉致問題と核問題等安全保障上の問題の包括的な解決だということです。過去の私は、北朝鮮の現政権を相手に国交正常化などしても国益には適わず、むしろ現政権の崩壊の方法を考える方が良いと思っておりました。しかし昨年9月17日の小泉首相訪朝後に実現した5名の被害者の帰国を受けて、北朝鮮に残されたご家族や安否の判明しない他の被害者の安全を考えると、現在は、被害者やご家族全員の救出が現実のものとなるまで現政権との国交正常化交渉カードは温存し、粘り強く対話を続けるべきだと考えております。

 第2に、本来、自国民の生命と財産を守ることは国家の最大の責務ですから、国民の命が危険にさらされた時には軍事力を使ってでも救出するのが主権国家としての当然の権利だと考えています。米国人が拉致・誘拐されたなら、迷いなく米軍は救出行動をとるでしょう。残念ながら、日本の憲法では自衛隊による海外での自国民救出行動は認められないとの解釈が圧倒的ですが、私は「広義の自衛権発動」に該当すると思っています。少なくとも「潜入捜査」を可能にする法的担保は早急に必要だと考えています。

 第3に、軍事力による邦人救出は違憲とされている現状にあって、日本政府が為し得ることは、日朝2国間の「対話」を続けることと、日本独自で為し得る対北朝鮮「圧力」施策を続けることが基本となります。ここで注意しなくてはならないのは、「圧力をかけることで北朝鮮が暴発するのでは」と恐れて譲歩することだけは避けるということです。恐怖に屈することで、日本人が永久に北朝鮮の恐怖を感じ続ける結果を招くからです。

 最後に、国家の責務として日本独自の努力を続けることに加えて、国際社会による北朝鮮包囲網構築は欠かせません。

 その意味では、エビアン・サミット、日韓首脳会談、日豪首脳会談、日英首脳会談等、あらゆる機会を捉えて諸外国の首脳に拉致問題の重要性を訴え協力を依頼しておられる小泉首相の行動は的確なものだと評価しています。国連人権委員会への更なる働き掛けも重要ですが、特に、日本の唯一の軍事同盟国である米国が、北朝鮮問題について「核問題」に特化することなく発言し行動してくれることが重要です。ご一緒に頑張りましょう!

     
     
   
   
高市早苗(たかいちさなえ)
昭和36年生まれ。
神戸大学経営学部経営学科卒業(経営数学専攻)。
(財)松下政経塾卒塾(政治コース5年終了)。
米国連邦議会勤務(金融・ビジネス立法を担当)、大学教員等を経て、
平成5年より衆議院議員(現在3期目)。
通商産業政務次官、衆議院文部科学委員長、
衆議院憲法調査会・政治の基本機構のあり方に関する調査小委員長、
自民党総務会副会長、遊説局長等を歴任。
平成14年より経済産業副大臣。
     
     
     
   
   

 

 

     
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