2003年8月1日号
 
第一回目のコラム執筆は、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会事務局次長の増元照明氏にお願いいたしました。父上、増元正一さんが照明氏に遺された「おれは日本を信じる。だからお前も信じろ」という言葉は、私たちの胸にもしっかりと刻まれた言葉となっています。拉致被害者救出のために今、私たちがどうすべきかを語っていただきました。

   
増元照明
     
     2001年9月11日、NYにおいて衝撃的事件が起きた。米国はそれに対し新たな「テロ国家・テロ支援国家」との戦いを宣言、日本はいち早くその趣旨に賛同し「日本国もテロとの戦いを宣言」したはずではないのか?今、「拉致」を北朝鮮・金正日政権がその関与を認め、さらに被害者家族さえ拘留したままそれを外交カードとして経済支援を要求してくる「テロ国家」に対して、何等具体的な政策や対処をしようとしない日本という国は国際社会の一員としての責任を果たしているといえるのだろうか?

 日本の中には多くの「人権団体」があり、声を大にして「アフリカの子供たち」や「アフガン・イラクの国民の救済」を訴えているが、その中のどの団体が日本国民の被った「北朝鮮国家による拉致」という大きな人権侵害に関し、又、北朝鮮国内における人民に対する悲惨な人権侵害・多くの国民を餓死させて自分たちだけ贅を尽くし、他国を脅かす武器・軍隊にだけ支援金を使う為政者に対し非難し是正を求める声を上げているのか?

 結局、この国においては政府も民間も自分に直接被害が及ぶ恐れのない闘いには、声を上げずに嵐が遠ざかるのを待つ。自らは手を汚すことのない無責任な言葉だけの「宣言」であり、「人権重視」なのだろう。だから、有識者の中に「5人を返せ」論を唱えるものがいるのだろう。なぜ彼らが「日本で子供を待つ」という意思を表明しているかも理解しようとせず、自分は汗をかかないで再び「被害者」に対し「金政権」という悪魔と戦えといえるのか?まず彼らを24年間放置してきた「国家」が「国民」が最前線で北と戦わなくてはいけないのではないか?

 違うというのなら、日本は「テロ国家・北朝鮮」に対し厳しい姿勢で臨むべきであり、それを支援する中国・韓国・ロシアに対し非難をすべきではないのか?「人権団体」は、被害者の原状回復を強く金正日政権に対し求めていかなければならない。よく、「日本が犯した過去の過ちへの謝罪」を口にする有識者がいるが、それは「過去」のことであり、拉致は「現在進行形の人権侵害」である。少なくとも被害者全員を帰し、その上でお互いの補償問題にすべきで、なんら解決していない今もかの地で「救出を待っている被害者」を見捨てる発言は「人権」という観点から許されるものではない。

 今、日本は国際社会の一員として果たすべき義務を、「人権を重んじる国」として声を上げるべきだと思う。もう「傍観者」ではいけないと思う。
     
   
   

増元照明
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会、事務局次長
1955年 鹿児島県鹿児島市生まれ
1978年 8月12日 姉 るみ子が拉致される
1997年 「北朝鮮による拉致」被害者家族連絡会結成と同時に事務局就任



http://www.interq.or.jp/power/masumoto/

     
     
     
   
   

 

     
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